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森の休日社
浜田隆史さん
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    浜田隆史さん (ラグタイム音楽・ボーカル)

    日本のラグタイムギター演奏の第一人者として定評あり。

    初めて聴いた時、洗練された美しい音の波がシャワーのように
    客席に降り注いで来てびっくりした。ギターなのですが、ギタ−じゃないような。

    棹の弦を抑える左手・奏でる右手の間を通り抜ける、
    生き生きした脈動。超絶技巧演奏はライブならでは!

    ラグタイム音楽とは、19世紀末から20世紀初めに広まった黒人音楽。
    一般には映画「第三の男」や「スティング」(エンターティナー)のテーマ曲で
    なじみ深いです。
    そして上記のと微妙に趣の違う「これぞラグタイム」と思うような「らしい」曲を聴くと、
    イメージしやすい情景があります。

    いずれも昔の外国映画。
    古き良き時代のホテルのレストランやバーで、
    着飾ったお客さん達のために演奏される生の音楽。
    麻のジャケットの演奏家達。

    または大きな商船が停泊する港、昔の外国のお洒落な酒場。
    港湾で働く仕事帰りの労働者や、船員や商人達がくつろぐ時間、
    ステージの音楽。

    つまり洒脱で軽快な、音楽です。

    生活の中の何かがシンドイ時に聴きたい音楽を2通りに分けると、

    ?哀しい辛い気持ち、メッセージ等をストレートに表現している曲
    (共感することで、自分の中の感情・想念を解放して楽になれる)

    ?特に特定の感情を表現せずに、何もかも忘れて楽しめる音楽

    ラグタイム音楽は?だと私は思います。
    浜田さんも曲によっては踊るように、体中で演奏していますが、
    こんなに陽気でリズミカルな音楽は、めったにないのです。
    でもその音符の隙間に、人の生活のさまざまな想いが昇華されていく。
    「まあ、いいや」「また明日」って。

    ライブハウスで浜田さんの演奏を聴きながら、
    「ああ、こんな音楽を聴ける時間もあるのだから、また明日もがんばろう」
    と思えたのです。
    当時の黒人の状況は、とても大変なものだったと思います。
    でもこんな音楽があった。

    民族音楽の力強さって、ラグタイムに限らずこういう「しぶとさ」を
    くれることだと思います。

    ボーカルは、フォーク系。
    個人的な趣味で恐縮ですが、私はこれをラグタイム音楽と分けて
    別々にライブをしてほしい。それぞれの良さがあるから。

    浜田さんの唄もファン多く心癒されるとても良いものです。
    楽しい軽い歌い方、さり気ない日常のことを題材にした素朴な歌詞に
    慰められ、元気が出た人も多いです。「クラス会」「いばって歩け」等。
    特に一曲歌い方がとても個性的で面白い「素のままで」が私は好きです。
    聴けば分かる(うん)。あの良さは。

    切れ長の目と五月人形のような口元が魅力!

    それから浜田さんが雨天の日と所用・ライブの日以外はほとんど毎日する
    小樽運河路上演奏(投げ銭スタイル)。

    私はライブは、ちゃんと屋内の会場で聴くのが好きです。
    浜田さんの演奏も屋内の会場で聴く方が音楽的には好き。

    でもこの運河演奏は、想像してたよりず〜っと良かったですね。

    屋内会場のライブは、音楽を聴くためにベストの状態にしてあるし、
    演奏者の音楽の妨げになるものがほとんどないから、
    その音楽のベストのエネルギーを集中して感じられて大満足!!

    それに比べて路上演奏はとてもすがすがしく心地良いのですが、
    誰のであっても音の条件が悪いので、
    聴くサイドとしてはそれほど好きではありませんでした。
    でも浜田さんのは良かったデスネ。これはこれでヤミツキ感有り。

    運河の浜田さんは、
    普段の超絶演奏ライブとはまた違う演奏の仕方に思えました。
    運河に合わせてオタルナイ・コードというオリジナルコードで
    演奏するのですが、それ以前に別タイプの演奏に感じられました。

    小樽の夕暮れ、運河と水、橋、初夏の風、石畳、洋館風の建物の並ぶ街並み。
    そこでの浜田さんは静かに街の風景の一部になろうとするような、
    デリケートな演奏の仕方。
    ここだけの、というようなはかない感じの時間でした。

    この演奏自体はほぼ毎日、13:00〜16:00、
    そして夏はさらに夜19:00〜21:00に予定されています。

    (その日演奏あるかどうかは、浜田さんにメールで前もって
    確認した方がいいと思います)

    街の騒音にギターの音がかなり散ってしまうのですが、
    それが逆に何とも言えない、静かな響きを....。
    耳をそばだてて聴く、という感じの良さ。

    有機的な関わりを音楽で、その土地、空気、水、燈、街の風景や年月に持つということが
    出来るのだなぁ、と思いました。
    つまり、音楽が夕日や運河の水や夏の風や石畳と一緒に呼吸して、ただある感じ。
    ただ自分も溶け込んでいきたいような演奏。

    例えデジタル楽器でないアコースティック楽器でも、弾き方によっては
    演奏自体は良くても、街に溶け込むということは出来ないと思います。

    音楽で有機的な関わりを周りと持てるというのは、
    多分小樽を愛する浜田さんが、
    自我を越えて、小樽に対してオープンになっているからかなぁ、
    と思いました。

    また来よう、と思いました。
    次回は小さな折りたたみイス持参で。

    ※ちなみに路上演奏をのんびり聴く用goods。
    地面が土でない限りは腰を下ろしてゆっくり聴くのは、冷えて困難。
    で、もし長く聴いてみたくなったら.....

    ?ぶ厚い古雑誌一冊。この上に座る。
    又は週刊誌一冊と古新聞の朝刊があると便利。新聞を四つ折にして上に週刊誌。
    ここに座る。
    女性はさらに白い半透明のビニールのゴミ袋をかけると、見た目もOK。
    ?大きな旅行用品売り場にある、空気入れて使える携帯用クッション。
    新聞紙の上に、これを置いて座る。
    ?小さな折たたみイス。座り心地ベストなれど携帯用には重すぎるかも

    私が行った日の中では、
    「夢和に捧げる曲」「メナシトマリ」「蘭島」等のオリジナル曲が好きです。
    それからラグタイムではないですが、古い映画「慕情」のテーマ曲が絶品でした。
    (映画はオーケストラなのですが浜田さんはギター一本。別の味が出ます)
    やはり運河沿いを歩く人たちが立ち止まっていきますね。
    あと特にロシア人に喜ばれる、ギターで「バッハチェロ無伴奏ソナタ」もアリ。


    面倒見がよく、太っ腹な所のある人。
    他の隠れた素晴らしいユニットのライブを企画して紹介したり。

    文学畑の方の詩作も。
    彼がこよなく愛する小樽を題材にした詩が多いです。

    またアイヌ研究家としても仕事をされています。

    やはり少数民族文化の理解は、

    その民族の方々自身の働きかけ「伝える活動」と、
    伝える・伝えられる側両方のための翻訳(言語の訳だけでなく解説・研究等々)
    仲介「橋渡し活動」と、伝えられる側・受け手の意欲「知るための活動」が
    必要ですよね。

    この三つの立場の方々のどれが欠けても難しい。
    そしてこの三者がきっちりかみ合うと、単なる文化の理解のみならず
    三者の立場の分け隔てが薄れて、「みんなで一つの目的を持ち、活動する」という
    実感が生まれていくのだと思います。

    浜田さんの気持ちは、
    昔、アイヌ文化を学びたくて長く勤めた会社を辞めた程、強いものでした。
    それが段々少しづつ実を結んでくのが、
    外目にも楽しみな感じがします。

    現在はアイヌ民族関連の出版に幾つも関わり、
    ボランティアでアイヌ語の新聞「アイヌタイムス」の執筆者もしています。

    アイヌ民族はまったく独自の言語を持っています。
    私達の住む同じ土地の上で自然に出来上がった、日本語とは全く別の言語アイヌ語。
    そこには和人が見落としていた、北海道の別の素晴らしさが現れているのかもしれません。
    決してアイヌ語はやさしい言語ではありませんが、それを学ぶことで自分たちが知っているはずの
    北海道という土地の新たな面が見えてきたりするのでしょうか。。

    浜田さんに限らず、一般に音楽をする人たちは言語の習得に強い方が多い気がします。
    その必要がある場合の方は、ですが。
    音楽出来ない私は、日本語もなかなか・・・・。(トホホ)

    ★最新CD「赤岩組曲」は作曲家としても新境地、
    新しい試みのある作品集。
    昭和初期のティストのある題やイラストもいい。

    中でも”想い出”は珠玉の一曲だと思った。曲も演奏も。
    何を想い出してつくった曲なのか、
    ドラマやCMの曲にもいいなぁと思う私ってミーハーさんだなぁ。

    ◆この新作CDの発表も兼ねたライブに12月上旬私は行ってきました。
    絶好調の超絶技巧演奏!!CDとはまた違う種類の迫力。

    ただ浜田さんはそのテクを「どうだすごいだろう」とひけらかすような
    演奏はしない人です。
    ただ演奏中にその難しさを一つ一つ自分でクリアしていくことを楽しんでいるだけという印象。
    そしてそれらが演奏の中でとても自然なのは、演奏の中で必要だからなされているからだと思いました。
    ライブ「赤岩組曲」の演奏で浜田さんは何も説明しませんでしたが、
    まるでギターで岩を愛でて登っていくかのような演奏を披露してくれました。
    まず弦の音一つ一つが微妙にぶつかりあって、かすかにはじけ合うようになる。
    そして弦の音色が連なりをつくり出す。そしてその旋律、リズムの中には
    かすかなくぼみや尾根のようなのがあって、彼はそれを丹念に弦であぶり出す感じ。

    引越しの多い私にとって一つの土地がこれ程深く心に染み込むことはなかったです。
    いろいろな家や土地に住めて、楽しかったと思ってきました。
    多少人より見聞が広くなったつもりでした。

    でも浜田さんと小樽への深いつながりを感じると、
    一つの土地を愛し、深く思うことで逆にそこから普遍的な何か、
    「地球のすべて」を大切に思うこと、方法を学べるのかもしれないと
    ちょっぴり思いました。

    ◆2004年12月には新しい歌のCD「歌箱」が発売されました。
    ラグタイムギタリストと違う、浜田さんの歌の世界がぎっしり。

    ★浜田隆史さんにという方には、類まれなる美質があります。
    それは新人の方にチャンスを沢山あげる所です。

    青田好きというのでしょうか、高校生のギタリストと一緒にジョイントをして
    先々の成長を楽しむ親心というのでしょうか。
    これは浜田さんご自身が高校生の頃からライブに出るようになっていたことへの
    ご恩返しという部分もあるのでしょうか。
    理由は何にせよ、普通ミュージシャンの方々はご自身の演奏活動だけでも精一杯のはずの
    だと思います。(生活もあるし)
    だから浜田さんのこういうところを、私はとても素晴らしいと思っています。

    雪
    後日追記 2006年1月
    昨年末に発売されました新作CDの
    『プレイズ・ロベルト・クレメンテ』の発売記念も兼ねました
    ライブに行って来ました!!
    久しぶりのライブ!!!

    浜田さんご自身の帰りの交通が心配だった程の、大雪でしたが
    激寒い、吹雪なのに会場はびっしりでした。

    ただ、悪天候のせいで会場にいたのは私以外は玄人ばかり。
    やはり「ジャの道はヘビ」っちゅー、超絶技巧のアコースティックギターの魔道、アリジゴクのような魔界をカンジさせられました。

    アコースティックギターを弾ける人口は多いですが、
    プロになるのは生やさしいことではないです。
    しかもエレキと違って食えない。
    そして、他民族音楽は演奏が困難な割に、評価されにくいという
    ハンディまである!!

    なのに異様な練習量を必要とする、本当に大変な道のりです。

    何のいいことがあるのか?!!
    しかし、浜田さんの周りの方々は
    皆さんアコースティックの「匠」揃い。(今日の会場も本州でも)
    ボロは着てても(地味でもセンスいい人多いですよ)、
    音は錦!!!

    (デジタル音楽ばかり聴いている方は、何度か通って頂くと
    耳がアコーステイックに慣れて、良さがはっきり分かってくると
    思います。これが辛い所なのですが、それぞれ良さがある二種類の音楽。聴こえ方が違うので、少し慣れる必要があるのです。)

    市場がメジャーで一杯儲かるデジタル音楽と違い、
    インディーズの他民族音楽の演奏は、
    なかなか舞台に費用はかけられないけど、
    それはそれは贅沢なライブだと
    私はいつも、思っています。

    この辛いけど、止められない、
    「底なしの天井知らず」の、
    アコースティック・ギター音楽の魅力に、
    演奏家の方々がずぶずぶハマっていくサマは、
    さながらアリジゴクの砂穴に落ちていくエジキを
    思い出したり....(はは...許してぇ)

    浜田さんの意見で私もすごく同感なのは、ラグタイム音楽のミュージシャンとして「自分でつくった曲でも、人のつくった曲でも演奏家としては、どちらでもかまわない」という意味の言葉です。
    ラグタイム音楽は伝統をふまえた音楽だから、その中で同じ曲を弾いても、浜田さんにしかない個性があるのだと思います。
    浜田さんご自身の曲は外国でも評価されていますが、浜田さんは人の作曲した曲も同じように愛情を込めて、丁寧に演奏する人です。

    で、アリジゴクの話に戻りますが、今回の新作CDの
    「プレイズ・ロベルト・クレメンテ」は他人の曲です。
    強風
    そう、この「プレイズ(Plays)」という表題の言葉も
    私が思うには、こう何と言うか「はしたない」というか、
    舌なめずりして、腕にヨリかけて、この難しい他人の曲を演奏、
    弾こうとする、超絶技巧のギタリストの浜田さんの愉しみが
    ミエミエで、
    イヤだと思いつつ、また演奏を楽しんでしまうのでした。
    (はは、ゴメンナサイ)

    (このCD、海外の評価も高いし、
    各方面から絶賛されました)

    アコーステックの一番オイシイ所は、ライブでないと聴けません。
    でもライブ会場に来ると、やはりこういう音楽の素晴らしさ、
    人間と自然の恵みのしずくを感じさせてもらえます。

    ライブだから後に残すこともできない、同じ曲を弾いても
    一度たりとも同じ演奏はない、常に一度限りの感動のせつなさと
    貴重さを、ぜひとも沢山の方々に味わってもらえたら、
    本当に素晴らしいと、いつもいつも思っています。
    (ちなみに、アコースティックは誰であっても、
    たまにハズす日がありますね。人間だからそれもスリル。
    で、ハズしたなりの、又別の良さが出ててこれも、味のうちです)

    私が、楽しんだ沢山の時を、多くの人とも分かち合いたいと
    思うのは、余計なお世話でしょうか?

    さて、この日のライブ、浜田さんのメガネがダサいとか、
    服がキタナイとか、玄人仲間からの容赦ない批判の中、
    浜田さんのライブが行われました!!

    浜田さんのギター・プレイが佳境にさしかかると、
    浜田さんを囲む、玄人仲間たちの盛んな拍手や口笛が!!!
    陽気で洗練されたラグタイム音楽と、高度なギターテクを
    会場は心から楽しんだのでした。

    今回思ったのは、確かにテクニック自体の難易度と、
    それが良い音楽であるかどうかは、必ずしも一致しないけど
    でもライブの中には、その「超絶技巧」自体を楽しむ曲があっても
    素晴らしいなぁ、ということでした。

    残念ながら私はギターの弾き方を全然知らないのですが、ギターをやれる人は、浜田さんのすごさを私よりもっと理解出来るようでした。しかしギターの知識がなくても、指の巧みさ弦の華やかさは十分感じました。

    芸術的にも浜田さんのラグタイムは、素晴らしいし、
    ギターという素朴な楽器から、あらゆる可能性を引き出そうとする
    浜田さんの生真面目さ、貪欲さ、真剣さ、楽しさが伝わってきて、
    聴いている素人の私まで、感化されるようでした。
    何の道でも、そういう心が大事だと無言で教えられた気がします。

    今まで浜田さんのライブは運河の路上演奏と、
    ライブハウスの演奏は違うものでした。
    しかし去年まで感じなかったのですが、
    今回ライブハウスで浜田さんの演奏の背景に運河での浜田さんが
    重なって見えたような気がしました。

    音楽家としてこれは必ずしもプラスするとは限らないと
    私は思うのですが、
    昨夜の浜田さんは「煮込んだおでんのように、いい味が染みてきたなぁ」と思えました。
    浜田さんは良い意味で、二つの音楽を融合させつつあるのかも
    しれないと思いました。(私には音楽のことは、分からないけど)

    「ロベルト・クレメンテ」は、亡くなった野球の名選手を偲んで
    作曲された音楽だそうです。
    浜田さんのギターで、記憶の遠い霧の中のグラウンドで、
    名プレーを繰り広げる往年の大リーガーの姿がとぎれ、
    とぎれに見える気がして、その距離感のちょうど良さも
    とても良かったです。

    「グレート・スコット・ラグ」も「パインランド・メモール」
    私は好きです!!

    あとライブの中で久しぶりに「ロック・クライマー」という
    浜田さん作曲のCD「赤岩組曲」の曲を聴きました。
    又昔と違ったように聴こえた気がしますが、再確認したのは
    やっぱり「赤岩組曲」は名曲多かったなぁ、ということでした。

    モグモグ
    さて、本当のことを言います。
    私は浜田さんの歌は、一部の曲を除いては、
    味わいがありながらも、そのギターに比べるとあまり興味が
    なかったです。

    でも今回、聴いた歌は良かったです。歌い方が少し変わったせい
    かも。「噴火湾沿いの道」!!
    それから「北海道ラーメン協会(あるのか?)」で、
    ぜひテーマ曲にしてほしいと思った「ラーメンの歌」も好きです。

    「例えどんなに体に悪くても、
    命をかけて毎日のように食べ続ける」という
    浜田さんの心意気が感じられましたね。

    (ちなみに時々、食べる分にはラーメンは素晴らしい食べ物だと
    思います)

    2005年2月


    詩人の浜田隆史さん 。
    日本を代表するラグタイムギタリストの浜田隆史さんは
    アイヌ語の研究・出版の仕事でも活躍していますが、
    文芸畑の詩人でもあります。

    どの詩も良いですが、個人的好みでは特に最新作の「ヤイサマ」の
    とりわけ「ヤイサマ3」がとても良かったです。

    浜田隆史 詩集

    http://www.geocities.jp/otarunay/yaysama.html

    参照    
    浜田隆史HP

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