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森の休日社
OKIさん
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    OKI(ワールドミュージック)

    トンコリ(樺太アイヌ伝統的弦楽器)、エレキギター奏者、ボーカリスト。音楽プロデューサー

    アイヌ伝承音楽をベースにした現代音楽、オリジナル曲多々。
    初めてOKIさんのトンコリの演奏を聴いたとき、次第に音楽に洗われて私の見たことのない
    野性の大地、「遠い彼方の蝦夷の地、太古の北海道」の幻影が現れ始めたような気がした。
    私の知っている文明の都市ではない、神と大自然と共に生きようとしたアイヌ民族の集落、
    命の糧を運んでくる河の水の大きな流れを。

    どの楽器演奏もとても上手い方です。ゆったりとした癒される曲想が中心。
    テーマもボーカルもアイヌ伝承のものをふまえた、素晴らしいワールドミュージックでもあります。

    アイヌの歌で有名な安東ウメ子さんもそうなのですが、
    アイヌのボーカルはインドの古典音楽の歌を彷彿させる部分があります。
    アイヌ独自の、別のものなのですが共に根源的な発声を感じさせるからでしょうか。

    またそこを彼はhiphopのティストで処理して、ポップスが好きな普通の若い世代の人も一緒に
    楽しめるような現代音楽にしています。

    OKIさんの素晴らしいサウンドは世界で評価されています。
    アイヌ民族の楽器は原初的な力を感じさせる素朴な音色の民族楽器ですが、
    演奏家としての彼は素朴だとは思いません。(いい意味です)

    勝手な想像ですがアイヌ民族ということより、
    この人は芸大という所にいたためにこういう感じの民族楽器の演奏が
    自然に出来るようになれたのかな?と思った。

    良くも悪くも周りに楽器の下手な人(発展途上の人)がいない、
    気を抜ける瞬間がない環境でアーティストとしての自己形成をしてきた人という感じ。
    演奏家として「瞬間的に最も安定する、ムラやアラのないスタイルを選択して実現できる
    音楽のための三半規管(?)」のようなものが培われてきたような気がします。

    演奏中も全体の演奏を実に良く聴いている気がしました。
    そして例え共演したことのない楽器とでも、また何かあやういリスクのある瞬間でも転ばずに
    瞬間的に名演奏に仕上げる力。
    まあ多彩な方面で活躍されている彼が何を学校で専攻されたのか知らないのですが。

    私は音楽が分らないし、
    別に音楽にどの学校もないと思うし、要は一人の音楽家が辿る道のりの中で学校を選ぶ人も
    選ばない人もいるという位の認識しかないです。
    芸大だから好きとか嫌いということもなく、あくまで演奏家個人それぞれが
    自分の好みの音楽をしそうな人かどうかという点で、チケットを買うかどうかを決めています。
    OKIさんと逆の、不安定な感じの演奏をする演奏家の良さに魅力を感じることもあるし、
    その時の好みそれぞれだと思っています。

    ただ良くも悪くも芸大は権威であると同時に、芸大以外のアーティストの指標、標的にされる辛さもあると
    思います。専攻が音楽であってもなくても、期待とねたみを背負う辛さがあるように思えます。
    そういう圧力の下でがんばってきた人だけが身につけられる力があると思いました。
    (芸大だから皆いい人とかいい演奏家とかそういうことはなくて、あくまで個人の問題なのは、
    芸大以外の演奏家と同じですね)

    またOKIさんは素晴らしい音楽家であるだけでなく、
    アイヌ文化を通して民族のリーダーシップを取っていくような知恵、たくましさを感じる人です。
    お洒落でセンスの良い服装でまだ若いのですが、ひげの長老のような知性を感じます。

    近年世界中で自然と調和して生きるインデアンやアポリジニ等いわゆる「先住民族」と
    言われる人々の生き方、知恵を学ぼうという動きが目立つようになってきました。
    シャーマニズムの優れた面というのか。

    世界中で、少数民族が追いやられてきたという悲しい事実があります。
    世界中で、平和で心清らかな先住民族に、奸智に長けた獰猛な支配民族が勝利したのでしょうか?
    高度に発達した文明、科学は何でも手に入れられるかのようでした。

    何世紀も、長い年月が経ってみると何をもって「勝利」したつもりなのか分らなくなっています。

    結局私達は、自然を破壊して自らを食い尽くしてゆるやかに自滅に向おうとしている
    地球の歴史の歯車を止めることさえ選べないようになりつつある。
    文明国の悲しさ。

    高度な文明の恩恵には同時に痛みや苦しみやゆがみも、沢山ありますよね。
    試行錯誤の人類の歴史の中で、方向転換する時期が来ているとしか思えない。

    結局他者を犠牲にして通すエゴイズムは、回り回って自らを蝕んでいく結果となっていく。

    今からでも遅くない、先住民族の知恵に習って自然と共生していけるような道を探していけたら
    素晴らしいと思います。

    日本人(和人というのでしょうか)はインデアンやアポリジニの本は沢山読みますが、
    アイヌ民族については何かしら罪悪感があるせいか、
    まっすぐに彼らを感じようとすることに多少抵抗がある人もいると思います。
    私達の先祖のしたことに対して。

    そして中には勇気ある意識の高い人たちがいて、
    事実を直視すると同時にこだわりのない目で豊かなアイヌ文化からさまざまなことを学ぼうとしています。
    彼らの良い活動からまたさらに、アイヌ文化を通して沢山の良いことを学んでいこうとする人たちが
    段々増えてきつつあると思います。

    (必ずしもアイヌ文化だけでなく、他のことを通して学んでも良いのですが)

    環境問題は悪化する一方だし世界の平和は実現されていないし、
    有史以来加害者と被害者は常に発生し、
    時に立場が逆になることもあり争いは絶えることなく続いて来ています。

    私達が未来に向かってどう考えて、どうしていったらいいのか、血で血を洗う争いの歴史の繰り返しを止めて
    新しい考え方や生き方に基づく社会を作っていけるのかどうか。
    真のやすらぎや豊かさは何なのか。
    自然環境や人間にとって痛みや苦しみの少ない、それでいて生き生きとした社会が実現できるのかどうか。

    OKIさんの音楽を聴きながら考えてしまったのは、彼の国連での活動等を通して高められてきた意識が
    無言のメッセージとして現れていたからでしょうか。

    アイヌ民族と日本人のハーフである彼の存在と音楽を通した活動が
    沢山の人に無言の良い影響を与えてきているのを会場一杯の観客、
    若い人たちを始めとする幅広い年代の男女の元気な表情から感じられました。

    ★世界各地での公演活動、さまざまなアーティストとコラボレーションあり。
    CDはこれまでで3枚。うぽぽとムックリの名手アイヌ民族の文化の代表継承者である
    安東ウメ子さん参加の「ハンカプィ」、最新CD「ノーワンズ・ランド」までアイヌの伝統と
    現代音楽を融合させた斬新なサウンドは世界でも評価されています。
    (2004年4月上旬)

    ◆ここで再びワールドツアーから戻ったOKIさんのライブに行ってきました。 

    去年からオーストラリア、ドイツそしてN.Yやワシントン等アメリカ各地を回って来た
    世界ツアーの実績が、少し余裕となったカンジ。リラックスした雰囲気とつやがOKIさんに
    更に加味されていました。
    元はN.Yのフィルムスタジオのヴィジュアル・アーティストだったOKIさん、
    やはり「その気」になると本当にセンスがいいです。
    今回はアイヌの民族衣装を現代アレンジ。大きさとかカットとか色づかい等とても良かった。

    (これからもどんどん「その気」が起きると客席は、楽しいと思いました。
    但し一般にスポンサーでもいない限り舞台づくりは衣装以外の費用も莫大だから、
    無責任な客席のリクエストも負担ですね)

    河のうねる大きな水の動きや、新緑からしたたる水滴をイメージしやすい幻想的で心地よい
    癒されるサウンド。アイヌ民族音楽と現代音楽の融合、アコースティックとデジタルサウンドの融合。
    民族に誇りを持ちながらも、現代人である聴き手のこと、若い世代のことも考えるOKIさんらしい
    心優しい音づくりを感じました。
    特に見事なのは一つの曲の中での「静止と躍動」のタイミング。
    それによって曲が立ち上がってくる感じがします。今回の演奏ではそれがとても良かった。

    トンコリとエレキギターとボーカルのOKIさん、
    特にトンコリではソロ演奏のときとそうでない時は演奏の仕方もちょっと違います。

    ユニットで演奏している彼は、
    全員で一つの音楽を作り出すことをもっとも大切に考えているような気がします。
    とても完全主義で、多分狂いを許さない気むずかしいリーダー。
    彼のトンコリもエレキギターも曲の随所で全体のコントロール楽器になることがある。
    そして演奏の途中で、他の各メンバーの楽器の音の中心に歩いて近づいていって、
    自分の楽器と反応しあうのを楽しんだりもする、ユニークで独特の演奏スタイル。

    そしてトンコリのソロ。こちらは本当にゆったりした曲想でした。
    そして今回感じたのは、多分今に至るまでのOKIさんの「素朴な、楽器との対話」。

    リーダーとして強さ、完全主義さを感じるユニット全体での演奏と違う、
    どちらかというと正反対のエネルギー。
    ソロ以外では体全体で、驚くほど他の人の音を常に聴いているリーダーOKIさんの
    タクトのような「スグレもののトンコリ」でなく、
    自分を引き寄せ、ここまで連れて来た「強い相手」であるトンコリと。

    一般に「楽器」ってまともに向き合うと、演奏者の何かの部分を剥ぎ取り、
    何かを突きつける作用があるもののような気がします。
    OKIさんみたいにプロの上手い方でも、又全然音楽素人のヘタな人であっても。
    楽器とはそれだけ怖くて、それだけ魅力があるのだと思う。夢中になり過ぎてしまう位。

    巧みなトンコリ奏者であるOKIさんも、この時だけは素晴らしい演奏の合間に
    「多分、死ぬまで知り尽くすことの出来ない”深い楽器としてのトンコリ”の存在感」の確かさに
    ちょっと照れたりするのかと思いました。
    (ユニット全体の演奏が続いた直後に、急に反対の雰囲気になったせいか)

    初めてたどたどしくつま弾いた子供の頃から、プロの素晴らしい演奏家となった今までの
    時の流れさえ感じた程。
    そして自然な予兆も。このゆっくりトンコリと向き合う演奏が、
    これからもっともっとゆっくり深く向き合い続けて、
    更にくつろいでトンコリがますますほどけていくだろう、とでもいうように。

    (トンコリに限らずアコースティックの民族楽器・古典楽器って、こういう不思議さを
    聴き手に感じさせてくれる瞬間がありますよね)

    (勝手な客席の印象でした)

    ※ちなみに、この「ゆっくり」は曲のスピードというより楽器と演奏者の
    コミュニケーションというような意味です。

    OKIさんのライブでの印象は、ミュージシャンとして世界に自分たちユニットを通用させるための
    したたかなリーダーシップ 。
    そしてアイヌ民族の音楽と楽器をこよなく愛するトンコリ奏者。

    そしてこれは客席の勝手なイメージ、印象ですが、
    普段は男くさい無骨なヒゲ面、リーダーのせいかちょっとコワモテ気味なのですが、
    実は子供好きで子供に好かれたくて、
    つい子供が近づくと相好を崩してしまって、大なしという感じ。(失礼します。ゴメンナサイ)

    舞台を観た限りではOKIさんは、その表情において人間的な内面を意外とつくろわない人だと思います。
    彼は少年でないと思う。誰でも少年のような幼い面は必ずパーソナリティの中に残っていますが
    彼はそのことを、あえて気にとめてない感じ。強いてしたたかに、老成しようと努力してきた感じ。
    そしてそれも魅力だと思います。(オフは知りませんが)
    (又人によってそういうのは様々で何が一番いいのかも、様々だと思う)

    彼はアーティストとしてとても恵まれて成功してきた部分もあるし、
    又国内や海外で苦労もしてきた彼は、大人になるのが早かったような気がします。
    人間が大人になると、誰でも知ることを彼も知っているという感じ。

    人生の喜びや楽しさ、苦い味や辛さアイロニーも、分別や無邪気さも、
    冷たさもしたたかさも、温かさ・情やもろさも純情さも全部オープンにしてしまう感じ。
    それがやれるのは少年には無理な技でもあり、
    又無駄な力を入れない故の、ただの自然さでもあるのだと思う。

    OKIさんの勝手ですが、私はOKIさんは舞台では何でも気楽に自然に
    ますますオープンになっていってほしいと思います。(わはは)
    それがかえって、他のメンバーともますますリラックスして和合する流れをこれからも
    ますます作り出していくような気がしました。(何か分かったような分からないようなことを
    書いて恐縮です)

    ジョギング
    後日追記
    2005年6月


    トンコリをもっと、じっくり聴いてみたいと思っているファンが
    沢山いたようで、今回たまたま「トンコリ」ソロ演奏部分が一杯
    ありました。
    他の音楽の時も同様ですが、自分の聴きたいリクエスト(?)と、たまたまそのミュージシャンの方向性が合っているときは、
    聴きたいものが聴けたりします。でも違うものしか聴けなくても、それはそれで素晴らしいのですね。

    (参照「リクエストは某焼き鳥屋なのか?」)

    新発売CDも「TONKORI」。今回ライブも主にOKIさんのソロライブ。
    このCDは細野晴臣氏や大貫妙子氏等メジャーな市場の
    ミュージシャンが絶賛。
    OKIさんの音楽はいつもはアイヌ・フュージョンというので
    しょうか、古典民族音楽と現代音楽の融合がなされています。

    だから演奏もトンコリとエレキギター、現代的な音響等でファン層も広くなっています。ロック、そしてラップやテクノ良さも。
    従って森の休日社としては、どちらかというと少し専門(?)外ジャンルなのですが、でも素晴らしいライブでした。

    今回は前半、トンコリを何本も並べて一曲ごとにOKIさんは
    楽器を変えて演奏しました。

    乳飲み子を抱くようにトンコリを持って、無骨なOKIさんが演奏し始める。しかし音が出ると、しぐさとは裏腹に今までのこの楽器との付き合いの長さをカンジさせました。
    不器用そうに弦をはじくのですが、
    トンコリの方がかすかに脈打ち、強い響きで、
    それに応えるカンジ。聴いている方までときめきを感じましたね。

    OKIさんは野性味たっぷり、男くさいコワモテなのですが、
    その攻撃的な感じのいつもの舞台が、今回のソロ部分は官能的で静かなものに変わりましたね。
    顔の表情もそういう感じになりました。

    ただこれらはいつも表に出なかっただけで、
    内面には前から持っておられたような気がします。
    前に別のアーティストのライブにご家族連れで来られている
    OKIさんを見たことがあります。(ふふ)

    結婚、そしてお子さんの誕生は多分、
    ハードなOKIさんの別の面をゆっくり引き出してきたのだと
    思います。

    年々、いろいろな出来事や、想いを昇華して、
    ミュージシャンは良い音楽をつくっていくのでしょうか。

    又舞台の上には素敵な共演者たちが常に沢山おられます。
    魅力たっぷりの男女のボーカリスト、ダンサー、女優さん達等OKIさんに限らず、ミュージシャンの舞台には、
    音楽・人間を触発する沢山の刺激に溢れているのだと思います。

    客席でそういうのを観ていると、いろいろ勉強になっていいですね。楽しむだけでなく。(はは)

    OKIさんのライブ・コンサートでいつもすごいと思うのは、
    あらゆることで観客を楽しませようとする、サービス精神です。
    会場にはカレー等の軽食、ビールなどの飲み物が
    用意されているし、演奏が続くと、
    間にディスコタイムをつくってみんなに踊ってもらったり。

    ビジュアルアーティストならではの、舞台演出も見逃せません。
    今回はステージの背景にOKIさんの作った、
    アートフィルムが切れることなく流れ続けていました。

    こういうOKIさんって、多分ご自分が若い頃いろいろなことを
    して、遊んだんだろうなあ、と思ってしまうのです。

    アメリカ行って美術関係の仕事もしたし、
    国連にも足を突っ込んだ。遊びの方も学生時代芸大生として
    多分多少のムチャもしたのかも
    (ごめんなさい、放蕩者扱いして。実際は真面目一本やりだったかも)。
    それからミュージシャンになっても、いろいろ。

    そうやって少年の頃から勉強も仕事も遊びも、目一杯がんばって、又公私共にいろいろな素晴らしい出会いと別れを経験して、そしてちょっと遊び疲れてしまったおじさんが、今度は若い子に気を使って「楽しんでいきなよ」「しっかり遊べよ」という、兄心的やさしさを感じましたね。

    参照

    OKIさん
    HP


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